日本の情報分野を代表する学会である情報処理学会.その第73回全国大会が東京工業大学(東京都目黒区)にて開催されました.
全国大会は,情報処理学会会員(会員の所属は全国の大学・高専・企業を中心としています)が広く研究成果を発信する場として設けられています.同時に,様々なイベントも企画されており,タイムテーブルにあるようにシンポジウム,招待講演,設備紹介などが開催されています.その一つに「ロボカップ春季競技会」がありました.
・・・実は,私(筆者)も研究発表のために来ていたのですが,朝,ホテルで偶然出会ったのです.見慣れた顔に.「何しに来てんの?」「ロボカップがあるんです」・・・
ということで,早速私もロボカップの会場へ行ってきました!
ほほう.こんな感じでやってるんだね.前のスクリーンでは,2Dサッカーシミュレーション(写真右側)と3Dサッカーシミュレーション(写真中央)が.また,天釣りプラズマディスプレイではレスキュー(写真左上)が開催されているようです.
サッカーはわかりますね?サッカーの選手一人一人をプログラムが動かすわけですが,なんと言ってもサッカーは選手同士の連携が大切です.その連携をどうやってうまくやるのか?そのあたりがキーになりそうです.
レスキューは,下の写真のような感じ.災害が発生した街の地図が与えられ,そこで助けを待っている住民をどれだけ救助できるかというチャレンジです.火災が起きたり(地図の黒い部分は燃えてしまった部分),道路にがれきがあって通行できなかったりします.救助チームは,やはりそういった情報を交換しながら効率的に救助することが求められます.
そんな会場で見かけたのは・・・.情報システム学科所属(または配属希望中の)学生さん(このとき2回生or1回生).彼らは,情報理工学部のプロジェクト団体Ri-oneに所属しています.がんばってますね〜
結果は?彼らに聞いてあげてください.
1回生や2回生の時から,こうやって他大学のライバルと交わりながら楽しみつつ,切磋琢磨している彼らは本当にすばらしい!技術的にも人間的にも得るものがあるに違いありません.今後も楽しんでほしいと思います.
こういったサッカーやレスキューといったもの,知的で面白いと思いませんか?どれだけ,コンピュータの中の選手や救助隊が賢く動くかにかかっていますから.こういったコンピュータを使った知的な挑戦は,チェス,将棋,囲碁の分野でもずっと続けられてきました.チェスは1997年にIBMのディープ・ブルーが世界チャンピオンを破ったり,2010年には東大の「あから2010」が女流王将を破るなど,コンピュータの躍進が報告されています.
さて,こういったコンピュータの知的な分野への挑戦.情報理工学部で言えば知能情報学科の分野だと思っていませんか?・・・実は違うんです.まったくもって情報システム学科の分野なのです.
チェスや将棋では「何手先まで読めるか」が重要です.コンピュータは,次の一手で動かせる駒はどれでどこに動かすことができるのか(そのパターンをn個とします),そしてn個の全パターンにおいてさらにその次の一手で動かせる駒はどれかでどこに動かすことができるのか,・・・ということを,「勝つ」という結果が出てくるところまで「計算」しようとしているのです.この計算,何手先までよむのかで計算量が指数関数的に増えるため,莫大な量になるんです.なので,コンピュータが強くなるためには,高速に計算することがとても重要となるんです.昔はコンピュータが遅かったので,結果的にコンピュータが人間に勝てなかったわけです.
高速に計算するためのコンピュータシステムを考える分野は,特にHPC(High Performance Computing,高性能計算)と呼ばれていますが,この分野の研究・技術の進展がそのままコンピュータの強さに結びついていきます.このHPC分野は情報システム学科の中心的な分野の一つです.情報システム学科では,國枝先生がご専門です.並列コンピューティング,分散コンピューティング,PCクラスタなどのキーワードが相当します.また,次世代の量子コンピュータも高速な計算を実現する技術として注目されています.量子コンピュータについては山下茂先生がご専門です.
ちなみに,高速な計算を必要とするのはこういったゲームだけではありません.地球環境や気象予測のためのシステムも同様です.コンピュータグラフィクスも同様です.
どうでしょうか?皆さんの興味ある分野が情報システム学科にありませんか?